旅の記録

【19歳の遍路:2日目】冷たい雨の中、遍路はゆく

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7年前、人生に絶望した19歳の青年「僕」は歩き遍路旅に出かけた。

このお話はその19歳の遍路旅を7年後の今、改めてたどる回顧録。

雨の遍路

 

3月9日

6時に起きた。

あたりはうっすら明るくなっていたが、気温はとにかく寒い!
先週までの陽気はどこいったのか。
しかも天気は雨。

今日歩くのは、かなりキツそうだ。

しかし、予定では明日は難関と言われる山越えをする予定なので、今日でできるだけ距離を稼ぎたかった。
進む以外の選択肢は僕にはない。

かじかむ手でやっとこさ寝袋とマットをしまい、ポンチョを被った。

大学生二人と別れ、一夜を泊めていただいた東屋に一礼して、僕は五番札所地蔵寺へと向かう。

大学生は自転車で先に行ってしまった。結局二人の名前も顔もよく分からず別れてしまった。
まあ、また縁があればどこかで会うこともあるだろう。

どうかあの二人が無事結願できますように。

そんなことを考えながら歩くとすぐに地蔵寺に着いた。

五番札所地蔵寺

 

時刻は7時少し前。
納経所のおばあさんがまだ準備をしていた。

大学生はもう先に行ってしまったのだろう。
境内に他に遍路の姿はなく、僕一人だった。

お詣りと納経を済ませ、軽く境内を散策してから六番札所安楽寺へ向かう。

途中、雨はどんどん強くなり、杖を持つ手の感覚はなくなっていた。

靴だって雨が染み込んでものすごく寒い。

かじかんだ手に雨があたると、まるで氷が降ってるように痛い。
本当に氷でも投げつけられているような感覚だ。

いや、違う。本当に氷が当たっていた。
冷たい雨は氷混じりのみぞれに変わっていた。

「はっはwwやべwwwマジ寒いwww」
僕は笑っていた。
どうしようもない状況では笑うしかなかった。

 

六番札所安楽寺

寺につく前から、なんとなく好きな名前だなと思っていたが、寺の境内がこれまた僕好みの境内だった。
山門を入ると正面に堂々と建つ本堂とは対照的に、横にひっそりと建つ大師堂も趣深い。
色とりどりの鯉に堂々とした塔。
そして紅白の桜が咲いているのも綺麗だった。
雨の中境内を散策していると「傘を貸しましょうか」とお寺の女性が声をかけてくれた。

ほとんど散策も終わったのでお断りさせて頂いたのだが、お寺の人もいい人だし、初めて『また来たい』と思えるお寺がここ安楽寺だった。

ホームページ等への掲載を目的とした写真の撮影は禁止なのが残念だ。

道を教えてもらい、七番十楽寺に打つ。

 

七番札所十楽寺

山門の立派なお寺だった。

早々と納経を済ませ、七番札所のすぐそばのうどん屋さんで昼食をいただくことにした。寒さと空腹で限界だった。
500円のキツネうどんを注文。思えばこれがお遍路にでて初めてまともな食事だった。

寒さに凍えていたため、あったかいうどんは本当にありがたい。おいしい。

うどん屋でこの周辺の地図を手に入れた。お寺と周辺スポット、ホテルまで載っている簡易な地図だ。

歩き遍路の地図は、遍路道保存協会が発行している黄色い地図が最適だとあらかじめ調べていたのだが、僕はまだ買えていなかったので、こういう地図はありがたい。

 

これが後に大変な苦労を生むとは、僕は思ってもいなかった。

 

八番熊谷寺

 

うどんで元気になり、八番熊谷寺に向かう。途中2つに別れた道があったどうやら両方遍路道のようだ。
『右お接待所あり』と書かれた看板がある。迷わず僕は右の道を行った。

しばらく歩くと『お遍路さんお接待します。お声をおかけください。お茶をだします。』などと書かれた大きな看板があった。

すごいなぁと思いさらに歩くとお接待所を発見。
ノックして中に入ると薄暗い小屋のようなものの中で、老夫婦と女性が微笑んでいた。

女性はお遍路さんでちょうど僕と交代でお接待をしてもらい、出て行くところだったらしい。

おじいさんにお茶を出していただいた。本当にありがたい。目の前にはいくつかお菓子も並べられていた。
おばあさんが作ったという干し芋を召し上がらせてもらった。

堅いけど、芋の旨味がよくわかる素朴な味だ。

そこで、八番には野宿できる小屋があること、十番は坂がキツいので麓のうどん屋で荷物をおかせてもらうといいことなどいろいろ教えていただいた。
やはり地元の人の情報が一番あてになる。

おばあさんは今78歳らしい。お礼の意味を込めて自分の納め札をおばあさんに渡し、接待所をあとにした。

 

また歩くと、キツい坂に差し掛かった。

雨も依然冷たい。

「やべぇwwキツいww寒いwww」
僕はまた笑っていた。

 

八番札所熊谷寺は山門から本堂までは、かなり距離があった。
途中の墓地で、なにやらお経が聞こえる。なにかやっているのかと思ったらスピーカーからお経を流しているだけだった。
毎日あれを流してるんだろうか。なにか特別な日だったからかなぁ。今までのお寺にはなかったことなので、少々驚きながら本堂、大師堂へと打つ。

 

地図が正しいとは限らない

八番が打ち終わった時点でまだ2時くらいだったが、今日はここで打ち止めと決めた。

この寒さだ、今日はゆっくり風呂に入った休まないと風邪ひくかもしれない。

なにより体は満身創痍だ。手は震えるし、足も感覚がない。

明日も雨みたいだから山登りは明後日にしよう。

さっきうどん屋でもらった地図をみると、四国銀行のすぐ次の交差点の近くにビジネスホテルがある。

そこに泊まることに決めた。

四国銀行をでて、次の交差点にきた。しかし、ビジネスホテルらしき建物は全く見えない。仕方なくガソリンスタンドで聞いてみた。

「この中央橋を渡るんスよ」若いお兄さんに言われた。

なるほど、字がつぶれて読めなかったが、橋を渡らなきゃならないのか…橋を渡り始めた。ところがこの橋が長い。長すぎる。1キロくらいあるんじゃないか。行けども行けども終わらない。

寒さと疲労で満身創痍の体には長すぎる橋だった。

さて、そろそろかなと地図をよくみると、まだ踏切を渡らなきゃならないようだ…この時点でやっと気づいた。

この地図の尺度はおかしい。
四国銀行から全然すぐじゃないし、次の交差点でもない。

地図の上の方に書かれている内容と比べて、下の方だけ尺度が段違いに縮小されている。
でも、他に泊まれるところを探す自信も気力もなかったので、ひたすらそのビジネスホテルを目指すことにした。

 

結局たどり着いたのは4時過ぎ。体感で四国銀行から7、8キロ歩いたような感覚だった。

 

ビジネスホテル「ロードサイド」

フロントの女性に事情を話すと、朝食をお接待してくれるという。

しかも明日は九番のあたりまで車で送ってくれるそうだ。

 

歩き遍路の一種のタブー、それは車に乗ること。
遍路道の全行程を全て歩きたいという自分ルールをもっている人は、車での送迎のお接待を断るらしい。

でも僕はありがたくお接待をいただくことにした。「どんなお接待でもしてもらったことは受け取る」これも遍路のルールだ。
この「ロードサイド」はビジネスホテルというよりも民宿のような人当たりの良さで、格安のコインランドリーだってある。

とても気に入った。一泊素泊まり5000円。夜、コンビニで買ったカップラーメンとサラダを食べて、1日ぶりの風呂に入る。

テレビをみると今日は全国的に寒かったようだ。他県では積雪20センチを記録したそうだ。

遍路二日目にして早速宿に泊まってしまったことに少し罪悪感を抱きながら、この日は眠りについた。

 

 

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シオ

シオ

H.2年生まれ。フリーランス。 ガジェット、アウトドア、バイクが好きなエストレヤ乗り。ローカルメディア「ありんど高知」編集長。 今年からハンター始めます。

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