旅の記録

【19歳の遍路:3日目】若遍路との出会い

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7年前、人生に絶望した19歳の青年「僕」は歩き遍路旅に出かけた。

このお話はその19歳の遍路旅を7年後の今、改めてたどる回顧録。

ぐっすり眠った朝

 

3月10日

 

6時に起きた。遍路3日目だが、すっかり早起きの体質になっているようだ。

やはり野宿と違って昨夜はぐっすり熟睡できた。
屋根と壁があるという安心感はやはり違うな。これは遍路に出なければ一生知らなかったことかもしれない。

 

あたりを散歩でもしようかと思っていたが、入り口が閉まってるようなのでまた部屋の風呂に入ることにした。

次はいつ風呂に入れるかわからない。たっぷりいただいていこう。

 

昨日びちょびちょだった服も靴もすっかり乾いていた。感謝感謝。

 

ホテルのフロントの女性がお接待の朝食を部屋まで持ってきてくれた。
ビジネスホテルとは思えないほど豪華な朝食だった。

ゆっくり味を噛み締めた。五臓六腑に染み渡る。まさにそんな気分だった。

そして、昨日言っていた通り、車で九番札所近くまで送っていただいた。

ホテルの女性に丁寧に何度もお礼を言い、別れた。

 

9番札所法輪寺

よくいえば素朴な、悪くいえばなにもないお寺だった。

特にみるべきものもないので早々に立ち去る。

 

今日の天気は晴れてこそいるが、風が強い。体感気温は昨日と同じくらいの寒さに感じる。

しかも天気予報では午後にはまた雨が降り出すらしい。
なんとしても雨が降る前に11番近くまで行かなくてはいけない。僕は歩みを早めた。

 

10番札所切幡寺

登り坂の途中にお接待で荷物を置かせてもらえる場所があったので、ありがたく置かせてもらう。

しばらく登坂と階段が続いたので置かせてもらって正確だった。本当にありがたい。

切幡寺の由来は空海がこの場所を訪れたとき、ある幡を織っている女性が手厚く接待してくれた。

また数日後この場所に空海が戻ってきたとき、空海が布を乞うたとき、女性は惜しみもなく織っている布を切り、空海に渡したそうな。
この説話がこの寺の由来らしい。

切幡寺本堂までは長い階段だった。階段を登っていると寺の鐘の音がした。低い胸に響くような音で、しみじみとした。

山深み  姿は見えじ     寺の声

暇だったので歩きながらそんな歌を詠んだ。

 

境内からさらに階段を登ると、立派な塔があった。
なんでも国の重要文化財らしい。こんな高い場所にどうやって建てたんだろうか。本当に昔の人はすごい。

 

参拝を終えて、寺を降りる途中に若いお遍路さんとばったり会ったが、ピアスじゃらじゃらの茶髪頭だったので、近寄りがたく声を掛けずに降りていった。

 

雨の中をまた歩く

 

昼になる前に予報通り雨が降り出した。

しかも昨日よりも風が強いし、雨も冷たい。蘇る昨日の悪夢。

雨風だけでなく、今まで歩いたことのないような長距離を連日歩いている疲労のせいでさらに歩みが遅くなっていた。

 

途中、女性のお遍路さんにも抜かれた。
お互いポンチョを被り顔は見えなかったが、体格から女性だということはわかった。

「女性に抜かれるほど、僕の歩く速度は遅いのか」とちょっとショックだった。

足にはマメができてるようだ。ツライしきつい。
できることなら川に沈んでしまいたい。

でも、それはいつでもできるから、もうすこしだけ頑張ってみることにする。

杖に寄りかかりながら、なんとか次の寺にたどり着いた。

11番札所藤井寺

今まで見たお寺で一番みすぼらしく感じた。

本当はこのお寺から伸びている山道を行って次の12番に行くのだが、今から行っては夜になってしまう。
まだ2時過ぎだが、今日はここで打ち止めにした。納経所で鴨の湯の場所を教えてもらい、寺を後にした。

 

鴨の湯での出会い

 

事前に調べた情報で、鴨の湯には無料の遍路小屋があるということがわかっていた。
今日の宿はそこにしよう。

 

遍路小屋とは?

四国遍路をするお遍路さんのために建てられた小屋。宿泊や休憩ができ、多くの場合無料か格安で宿泊できる。

 

鴨の湯にたどり着くとそこには思っていたよりも小さな小屋があった。

小さいとはいえ、屋根があって壁まである。十分だ。
今日はここでありがたく泊めてもらうことにしよう。

 

しかし、鴨の湯はなんと定休日のようだった。
温泉に入って足の疲れを癒したいと思っていたのだが、なんとも残念だ。

 

遍路小屋に荷物を置かせてもらいコンビニで食料を調達。
自転車まで無料で貸してくれるというから驚きだ。

遍路小屋には今まで泊まった遍路の納め札が壁一面に貼られていた。

コンビニから帰ってくると、小屋には一人若い男ののお遍路さんがいた。
この人も今日はここで泊まるつもりなのだろう。

「こんにちは」と声をかけた。

話を聞くと、時久さんというこの男の人は、僕と同じ高知県出身で、僕の住む街とは隣町に住む人だった。

しかも、今日切幡寺で会ったピアスじゃらじゃらの茶髪男だった。

切幡寺ですれ違った時はその見た目から近寄りがたかったが、こうして話してみると普通にいい人っぽい。

 

時久さんはおしゃべりが好きなようで、自分のことをたくさん話してくれた。

高校卒業できずにダブったり、アメリカ留学したり、沖縄のビーチにしばらく住んで住所不定の生活をしたりとハチャメチャな人生を歩んできていた。

年齢はまだ26歳という若さだというから、すごい人だ。

 

こうして人とちゃんと話すのも久しぶりな気がする。
鬱になってからは誰かと話をしたいとも思わなかったのに、今ではもっと話を聞きたいと思っている自分がいた。

 

時久さんの話は僕が想像もしなかった世界の話ばかりで、本当に面白かった。何より、さっき出会ったばかりの若造の僕に、自分の人生を赤裸々に語ってくれることが嬉しかった。

鴨の湯の周りには民家もないので、大声で笑ったりバカな話をして語り合った。

 

 

明日の焼山寺への六時間に及ぶ山登りは一緒に歩くことになりそうだ。一期一会若遍路たちの夜はふけてゆく

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シオ

シオ

H.2年生まれ。フリーランス。 ガジェット、アウトドア、バイクが好きなエストレヤ乗り。ローカルメディア「ありんど高知」編集長。 今年からハンター始めます。

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